== ビジネス・人文 ==

麺越しに見える日本!『ラーメンと愛国』速水健朗

文化系トークラジオLifeの放送のなかでちらと紹介されていたのと、タイトルがなにやら面白そうなので読んでみました。
この本面白かったです!
ラーメンと愛国 (講談社現代新書)ラーメンと愛国 (講談社現代新書)
(2011/10/18)
速水 健朗

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まず、なるほどと思ったのが、かつて中国文化の装いを持っていたラーメン屋が、作務衣風のユニフォームに、壁には手書きの人生訓の様な和風スタイルに変わってきているという指摘。
特に意識はしてこなかったけど、改めて考えると、なるほどそうだよなぁと驚く次第で。
“子供の頃のラーメンどんぶりといえば中華風の四角い渦巻がついていたよなぁ”とか、“北海道ではお馴染みだったベルのラーメンスープ(缶入り)の缶には麒麟みたいな中華っぽい動物が書いてあったぞ!”など昔の事を思い出すのは、本書第三章で指摘されている通り、日本人がラーメンにノスタルジーを感じるからか?

もう一つ驚いたのが、かつて支邦そば、中華そばと呼ばれていたものがラーメンへと切り替わったのが日清チキンラーメンのCMの影響だったという指摘。“へぇー”とトリビアの泉の様にうなってしまいました。もっとも故郷北海道では本書の指摘の通り、例外的に古くからラーメンと呼ばれていたのだけれど。中華そばという言葉自体、大学の時に関東へ出てくる迄知りませんでした。
ルーツも違えば進化の過程も違う別の料理だった博多の支邦そばも、札幌のラーメンもTVのCMによって『ラーメン』という標準語に変換され、同じ料理のバリエーションに書き換えられたこと
当時、返還前だった沖縄だけ、ラーメンにならず“沖縄そば”の呼称が残ったこと。
これもなるほど納得の指摘です。初めて博多ラーメンを食べた時、おいしいけれど、北海道のラーメンとは別の食べ物だよなぁと思ったもん。

横浜ラーメン博物館とともに増殖していった“ご当地ラーメン”は郷土料理ではなく、むしろ地方が個性を失いファスト風土化する中で観光資源として捏造されていったものである、とういう主張も、その様子をリアルタイムに見てきた世代なら、みんな共感できるものですね。 
 
だたし、北海道のラーメンについては若干の異議がごさいます!
札幌ラーメンが右へ倣えでみそ味が広がる様や、旭川ラーメンの呼称などは、ご当地ラーメン捏造と同じ文脈でとらえられるモノだと思います。子供の頃ラーメンはただのラーメンで旭川ラーメンなんて言葉はなかったもんね。
ただ、暮らしの手帳の花森安治に札幌がラーメンの街として発見された時、既に札幌をはじめ北海道には、やたらとラーメン屋がいっぱいある、そば屋は見かけないけど、街中にはそこここにラーメン屋の看板がある、というラーメン文化が定着していたわけであり。
この点は、評判の店が一つ出てくると、全くのゼロの状態から人為的に、右に倣えのメニューの標準化を図ってゆく喜多方ラーメン以降のご当地ラーメンとは いっしょくたにせんで欲しい!と郷土愛から叫びたい。

などと私がグダグダいうのもラーメンがまさしく国民食たるゆえんでしょう。
ラーメン好きの人もそうでない人も、楽しく読める社会論としてオススメです
読後の感想・おすすめ度⇒★★★★★(もう一つの国民食カレーについても同じ切り口で迫るとどうなるか?)

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