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== ビジネス・人文 ==

現代へ物申す!『未踏の野を過ぎて』渡辺京二

『逝きし世の面影』『黒船前夜』などの名著を世に送り出した渡辺京二の評論集。これまで新聞・雑誌に発表してきた物に加えて、巻頭には東日本大震災について語った書き下ろし「無常こそわが友」が収録されています。
未踏の野を過ぎて未踏の野を過ぎて
(2011/11/08)
渡辺 京二

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著者の他の作品と同様、近代合理主義への疑念と批判のまなざしに貫かれており、それが“時代の変遷についてゆけない老人の愚痴”に陥ることなく、むしろある種の潔さを感じるのは何故だろうか?
恐らく、著者自身が“つつましさ”を忘れていない事に加えて、仏教思想をバックグラウンドにした、自身の人生へのある種の達観から、こうした文章が生まれているのでは…。

著者が特に痛烈に批判するのは“自己実現”なる言葉です。

“自己を実現せねば人と生まれた甲斐がないというのなら、競争を勝ち抜く戦略が必要になる。目立たねばこの世の片隅この世の片隅に追いやられるのである。このような自己顕示の脅迫観念がいかに強烈な鬱積や心のゆがみを生み出すか…”と強く憤り、自分の分際をしることは人生の第一歩だと説き
“自分に何らかの才能が備わっていなくとも、美しく生まれついておらずとも、社会という構造物の上層で時めく才覚がなくても、自分は欠けるところのない人格なのだし、森羅万象とも他者とも創造的な生ける交わりを実現する上で何の支障もないと自得すること、それを分を知ると言う。”
と語ります。
そのうえで、現代はこうした
“自分の生にまつわる制約についての納得”すなわち“生きるうえでの根拠についての確信が失われた”と危機感をもって述べています。

言葉使いへの言及も多いですが、「~してやる」が「~してあげる」に全面変換されてるのは、“現代人の「やさしさ」なるものの欺瞞的性格”の表れであるとの主張は、印象に残りました。

また、市街地における巨樹の切り倒しと並木の無残な刈りこみへの嘆きも繰り返し語られ、“われわれの樹木に対する心性がまったく変わってしまったということではないだろうか”と問いかけます。

こうした、街路樹やいまの人間のもの言いについて考えることは、天下国家を論じるよりも、もっと本質的であり大事であり、われわれが対峙すべき時代の本質であると主張する著者はまた、“旧態依然たる思考枠で、左翼くずれ的情勢論を垂れ流している連中こそ犯罪的なのだ”として戦後左翼を批判しています。

『逝きし世の面影』から引き続いての、前近代は不幸だったか?という問いかけの中に著者の想いのすべて詰まっていて、
月並みなんですが実にいろんなことを考えさせられる一冊でありました。
読後の感想・おすすめ度⇒★★★(渡邉恒雄氏におすすめしたい一冊)

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