== 小説・エッセイ ==

空気感で読ませる吉田マジック『平成猿蟹合戦図』

前作横道世之介は80年代の青春群像を描いた大傑作!でした。80年代に青春期を送った私などは完全に落された感じでハマリまくりました。何といっても吉田修一のすばらしい所は、場面毎のセリフの背後に漂う“空気感”の描写にあると思います。
ここでいう空気感とは、山本七平が「空気の研究 で指摘した日本を支配する空気に通ずる、その場面を支配する空気とでも言いましょうか。細かなディテールを丹念に描いたり、印象的なアイコンをストーリーに埋め込んだりすることで、決して説明的にならずに、そこはかとなく醸し出す筆力には脱帽です。

平成猿蟹合戦図平成猿蟹合戦図
(2011/09/07)
吉田修一

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さて本作『平成猿蟹合戦図』でもこの空気感の描写力が如何なく発揮されています。 新宿歌舞伎町を中心に、長崎の五島、秋田の大館と3つの舞台が用意されますが、著者の故郷長崎の描写の素晴らしさは相変わらずとして、今回は歌舞伎町の描き方がいいですね。風林会館前の区役所通り交差点周辺に漂う空気が伝わってきます。

登場人物も実に多彩で、朋生、純平を中心とする歌舞伎町の面々と、とある事件から純平たちに脅迫されかかるチェリスト湊圭司とその親族。そして二つのグループを結びつけるマネージャー園夕子。これらの人物が織りなすストーリーは、もう有りえねーというかハチャメチャな展開となります。映像化不可能!
普通こう言うのはあまりのスペクタクルに映像化には巨額の費用が掛かるので、というニュアンスで用いられますが、本書の場合シナリオにした場合ストーリー構成が完全に破綻するので不可能!なんですよ。(宮崎駿は例外ですぅw)
この辺は好みの分かれるところかもしれません。

そんな外連味たっぷりの有り得ないストーリー展開なのに…。なぜだか、騙された様に違和感なく読み進めてしまう吉田マジック!場面ごとのディテール描写がリアルなのでその場その場に引き込まれてしまい、あとで考えれば“こりゃありえんだろう”という展開も気にならずにスルーしちゃうんですね。こういう所はある意味でエンタメ小説の真骨頂とでもいうべき部分だと思います。

合戦図というタイトル通り、外連味溢れる歌舞伎のような戦いを繰り広げる人物絵巻!読了後の爽快感もいいですヨ。
読後の感想・おすすめ度⇒★★★★(吉田修一ファンは必読!)

┃ Tag:吉田修一

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