== ビジネス・人文 ==

魅惑の古書『オックスフォード古書修行』中島俊郎

イギリス文学研究者の中島先生のオックスフォード滞在時の古書をめぐるエッセー。学術書ではないので気軽に読める内容です。
オックスフォード古書修行―書物が語るイギリス文化史オックスフォード古書修行―書物が語るイギリス文化史
(2011/09/22)
中島 俊郎

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不思議の国のアリスに登場する“ニセ海亀”が何故ニセなのか?を巡る時代背景、鉄道敷設により沸き起こった湖水地方への旅行ブームと国民詩人ワーズワスの関係等々…、興味深いお話がすべて古書を入口に展開して行きます。

私が最も興味深く思ったのは、オークションに参加して古書を競り落とす件のお話。
オークションといえば(ヤフオクは別として)サザビーやクリスティで美術品が〇〇億円で落札!みたいなニュースを日本でも見聞きしていますが、イギリスでは実に雑多なものが出品されていて、その中にちゃんと古本もあるんだそうです。しかも市民参加型のイベントになっていて参加を制限されることは一切なく、多くの一般人が愉しんでおり、無料の茶菓子も用意される憩いの場なのだそうな!著者によれば“テレビのお宝鑑定番組の延長”という事らしい。今迄想像していたものと随分と違って、なんだが楽しそう!
日本の場合「競取り」は業者間の閉ざされた世界になっているので、たまには、神保町の古本まつりなんかで、一般参加型のオークションがあると、盛り上がると思うんですが、どうでしょう?

イギリス人のそして著者の古本への愛情が随所にあふれていて、それが時に興味深く、時にユーモラスな味わいの文章になっています。イギリス田園風景の描写は、紀行文としても楽しめます。

それにしても、イギリスは、家も街並みも、本も古いものが大切にされ文化の蓄積が感じられるのがうらやましい!イギリスより遥かに古い歴史を持っている日本なのに、新しいものばかりが重宝され、街並み一つとっても貧弱な蓄積しかもたない事が、悲しいかぎり。
最後に普段はほとんど新刊本ばかりに接している私ですが、“ああ本ってこういう存在だよなぁ”と深く共感した一文を…

━若木が成長して、みごとな樹木となるように、本はひとに読まれていくことでその内容によって生命をえて生き延びていく。私たちが文字に自らの存在を託す理由のひとつがここにある。短命な人間という存在よりも何倍もの生命を本は宿している。しかも私たちの肉体は滅びるが、本の生命力は反比例し、いっそうの輝きをおびてくる。━(本文より抜粋)

本書を読めば、きっと神保町辺りへ、ふらっと古本めぐりに出かけたくなりますヨ!
読後の感想・おすすめ度⇒★★★★(ビクトリア朝の文化に興味のある方、林望先生ファンには是非)

┃ Tag:中島俊郎

┃ テーマ:最近読んだ本 ━ ジャンル:本・雑誌

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