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文句なく面白い!『中国化する日本』 與那覇潤

日中間千年の歴史を中心に近世の世界史を『中国化』と『江戸時代化』という概念で説明を試みる野心的な一冊。といっても文章は平易な口語体で書かれており、可能な限り専門用語を避けて一般的な言葉で書かれているので、とってもわかりやすい!且つ読みやすい!
かつて栗本慎一郎『パンツをはいたサル』タコ壺化した狭い学会内でのみ通用するコトバを否定して見せてから30年以上立つにも関わらず、未だに、内容のなさを難解な言葉とあいまいな結論で誤魔化す人文書が後を絶たない日本…。本書はその種の本とは一線を画す、万人向けの本であり、内容もすこぶる面白く十分にエンターテイメントとして成立しています。
中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史
(2011/11/19)
與那覇 潤

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中国化する日本というコトバが誤解を受けやすい響きがあるので著者も繰り返し述べているのですが、これは人民解放軍が攻めてくるとか、中国人が大挙押し寄せてくるとか、中国共産党の政治影響下に置かれる、とかのコトではありません。ひとつの歴史観として用いているのですが、ザックリと説明すると

世界の超先進国である中国では10世紀宋朝の時代には、部族社会が解体され、一君万民の皇帝独裁政治が確立し身分制が消滅、近世(前期近代)へ突入したのですが(堺屋太一の言う宋の亜近代)。この経済活動を徹底的に自由化(レッセフェール)する代わりに、政治秩序は一極支配によって維持してゆくしくみ、こうした体制もしくはこうした体制へ向かうことが⇒“中国化”
対して部族社会が維持された日本では17世紀に身分制のもとに人々が土地や職業に縛り付けられる幕藩体制という中国とは真逆の近世を迎える。この
欲を張らずに自分の田畑や職を守っていけばそこそこ食べて行ける社会、もしくはもしくはこうした体制へ向かうことが⇒“江戸時代化”

20世紀初頭の一次大戦以降、世界は一時的に江戸時代化していた為、戦後日本はこれに則して成功できたが、世界は、1979年のサッチャー・レーガン・鄧小平の新自由主義革命をきっかけに急速に中国化してきており、日本は強烈な中国化 への圧力に晒されている。この変化は歴史的必然であり不可避なものである

というのが大まかな内容なんですね。(ザックリ過ぎる説明で著者にバレたら怒られるのは必至!)詳しくは是非、本書をお読み下さい。

本書を読んで私自身が疑問に思ったことは2つ
1つは、そもそもではなぜ宋朝が世界の中でいち早く“中国化”できたのか?という点にはほとんど触れられていないのですが、石炭(コークス)の利用により、森林資源に依存するエネルギーの制約から脱却という点が大きい要素ではなかったか?だとすれば3.11以降の世界が再び江戸時代化する可能性もあるのではないでしょうか?という事。
2つ目は、著者は近世以降の中国化の流れの中で、明朝や毛沢東の共産中国や一次大戦以降の20世紀の江戸時代化を例外的な時代と捉えている様なのですが、むしろ世界は振り子のように中国化と江戸時代化の間を揺れ続けてきたのではないのか?だとすると、永楽帝以降の明の様に、鄧小平以降の中国化の流れが逆回転を始めて、江戸時代化へ向かう可能性もあるのでは?という事です。

著者は弱冠32 才の、まさに新進気鋭の研究者。日本の学会(特に歴史学会!)はこうした若い才能が出てくると、重鎮とよばれるお偉いさんが寄ってたかって潰そうとするか、ガン無視のイジメを決め込む事が多いので心配ですが、著者には是非負けずにこの線でガンガン押しまくって頂きたい!二弾三弾が大いに楽しみですね!

日本人の書いた人文書としては久々に文句なく面白いと言える一冊です!是非読んでみてください!

読後の感想・おすすめ度⇒★★★★★(満点!オススメです)



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