== 小説・エッセイ ==

これぞ古処戦争小説『ニンジアンエ』古処誠二

戦況が膠着状態にあった1943年ビルマ戦線。航空戦力の消耗から英軍側に制空権を握られつつある日本軍中の従軍記者が直面する物語。

ニンジアンエニンジアンエ
(2011/11/25)
古処 誠二

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著者の古処さんは1970年生まれの戦無世代にして元航空自衛官という経歴で、これまでも数々の戦争小説を生み出して来ています。
自衛官という“もののふ”としての経験からなのか、古処さんの戦争を描く視点は、胸に迫るシリアスさがあり古処戦争小説ともいえる小説群が誕生しています。


文壇のお歴々の中には、大岡昇平と比較して、実際の戦争はこんなものではないという趣旨の指摘をされる方もいるのですが、戦場のディテールなど、実際に従軍した者でしかわからないのではないでしょうか?
だとすると戦争を知らない世代が、戦争を描くことに意味はないのでしょうか?
古処作品で描かれるのは、戦場という極限の状況下において浮かび上がってくる“人間性の深部”であり、戦場は舞台装置であり(とは言え丹念に資料に当たっていることはうかがえる)戦場のディテールがテーマではない以上、いきなり大岡昇平と比較しては元も子もないお話だと思うのです。


本作では、我々になじみの薄い“宣撫班”という現地住民の世論工作を任務とする部隊が登場し、潜入してきた英国軍の討伐部隊へ合流し戦闘に参加する状況が描かれます。戦場での人間の生々しい描写は迫真と呼ぶに相応しい!
主人公の従軍記者、美濃部が直面する大義とジャーナリズムの矛盾については、オビにもコメントを寄せている津田大介さんの書評がすばらしいので、そちらをお読み下さい。


津田さんが言うように有事を伝える報道の在り方の問題は、まさに今日的問題であり、その意味で本作はまさに今の日本を照射している作品といえると思います。

私が感じたことは、戦争の様な、人間が自己の命を危険にさらす事も厭わない利他的行動に出るときには、それを駆り立てる正義(あるいは大義)という物語が必要なのであり、作中のビルマ人モンセンも英軍のコーンウェル中尉も形は違えど、正義に駆り立てられ、且つそれを欲していたのではないか?それは人間の業ともいうべきものであり、我々誰もが心に持つ要求である以上、ジャーナリズムの客観性という問題以前に、この強烈な需要に対して報道は正義を供給してしまう必然性があるのではないか?ということです。

3.11から間もなく一年。舞台は70年前の戦場ですが、震災後の現状を少し違った視点から考える上でも、今読んで欲しい一冊です。
読後の感想・おすすめ度⇒★★★★(インパール作戦前夜のピルマの状況が目に迫る)

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